九州大学大学院システム情報科学研究院 河村晃宏准教授

学術研究の発展に貢献する共和電業─九州大学准教授 河村晃宏先生の力学研究を支える「ボルト軸力計」

ボルト軸力計 / スポーツ科学

九州大学大学院システム情報科学研究院で教鞭を取る河村晃宏准教授の姿は、福岡市某所のクライミングジムにありました。ゼミの学生たちに囲まれながら、ラフなTシャツ姿で談笑する河村先生。手に付けた滑り止めのチョークをパンッパンッと払いながら、ボルダリングウォールを見つめ、学生たちに何やら指示を出しています。 そんな河村先生と、共和電業はどのようにして出会い、タッグを組むことになったのでしょうか?福岡の地で、じっくりと話を伺いました。

研究を前進するために不可欠だった「ボルト軸力計」

河村先生の研究内容を教えてください。

ロボティクス分野が専門で、ロボットハンドやロボットアームの制御を主に研究しています。関節を複数持つロボットの場合、人間と同じような力学を扱うことになり、その点において、スポーツ科学にも通ずるところがあるのではないかと考え、スポーツ科学分野の研究も始めました。ボルダリングに焦点を当てたのは、私が7年ほど前から趣味でボルダリングをしていたことが大きいですね。現在は、ロボティクスとスポーツ科学を両輪で研究しています。

河村先生の研究に、共和電業はどのように関わっているのでしょうか?

ボルダリングウォールの手をかける部分をホールドというのですが、そのホールドを固定するボルトに、共和電業さんの「ひずみゲージ」が内蔵された「ボルト軸力計」をセットするんです。これによって、ホールドにどのくらいの力が加わったのかを計測できるようになります。モーションキャプチャによる計測はかねてから行っていましたが、平面ではない、ウォールの傾斜が急な場所などでは計測が難しい。3次元的なウォールを登る際に、手と足のどこに、どういう配分で力がかかっているのか、また、手の間にかかる力、いわゆる内力がどのくらいなのかというのは、モーションキャプチャではわかりません。「ボルト軸力計」を用いて、それらを数値化して示すことで、トレーニングやコーチングに役立てられると考えています。

共和電業の製品を導入するに至ったきっかけを、教えてください。

ボルト型センサーを作ることになり、初めは共和電業さんではなく、懇意にしていた別の会社にお願いしたのですが、その会社は計測が専門ではありませんでした。研究を進めるにあたり、より専門的かつ高度な技術が必要になってきたので、共和電業さんのホームページから問い合わせをして、そこから関係が始まった、という経緯です。

技術的な障壁となったのは、ボルトの頭ではなく、先端からリード線を出すことでした。ボルトの頭からリード線が出ていると、当然ながら、ホールドに手をかける際に邪魔になりますよね。ボルトの先端からウォールの裏面にリード線を出せば、その問題を解決できる。当初お願いしていた会社には「難しい」と断られたのですが、共和電業さんは、二つ返事で「できますよ」と。とても安心したのを覚えています。

クライミングを科学する。共和電業の手厚いサポートが支えに

「ボルト軸力計」を用いて得たデータは、どのように活用されるのでしょうか?

クライミングは動きのバリエーションが多いので、データを計測したり、解析したりする、スポーツ科学分野における発展が遅れているのが現状です。たとえば、野球ならバッティングフォームやピッチングフォームなど、ある程度決まった定型的な動きがありますが、スポーツクライミングは毎回課題が変わりますし、壁の傾斜も違うので、定型的な動きではないんです。もちろん、身長などの個人差もあります。どんな動きが「正解」なのか、わかるようでわからなかったところがあったので、そこを定量的に示すことには大きな意義があると思います。 トレーニングシステムとしては、力のかけ方を定量的に示し、それを実践してみて、コーチング通りに動けたかどうかを確認することができる。従来は人の「感覚」に頼っていたものを数値化して、トレーニングに活かせるということですね。クライミングを科学する。ひと言で言えばそういう話です。

サポート面はいかがでしょうか?

サポートについては、もう助けていただくばかりで。たとえば、センサーを作る際にも、仕様をはじめ、さまざまな依頼をしていますし、ケーブルにコネクタをつけていただいたり、アンプをレンタルさせていただいたり。手厚くサポートしていただいています。すでに、現状の計測システムは共和電業さんのサポートなくして動かない、と言っても過言ではありません。また、技術的な相談をした時に、共和電業さんは、「それならこういう方法があります」「こんな事例もありますよ」といった具合に即答してくれるんです。計測に関する専門的な知識や経験、ノウハウの蓄積があるので、とにかく話が早くて、いつもスムーズにやり取りできています。

計測システムの常駐化を目指して

今後の展望や、研究を通して実現したいこと、共和電業との取り組みについて教えてください。

目指しているのは、「ボルト軸力計」を用いた計測システムをクライミングジムに常駐させることです。そのためには、ボルトの先端からリード線を出すことが不可欠であるのは言うまでもありません。リード線は壁の後ろに出ているわけですから、視覚的にも、物理的にも、クライマーはその存在にさえ気づかない、それがとても大切なことで。計測システムを常駐させることができれば、膨大な量のデータを取得できるのはもちろん、たとえばコンペディションシーンで活用することも可能になります。そのようにしてデータを収集できれば、データ解析も飛躍的に研究が進むのではないかと考えています。無論、力を計測したいスポーツはクライミングだけではありません。基本的には、ボルダリングウォールのように、環境側に計測システムを設置するタイプの競技であれば、あらゆる種目に使えるのではないでしょうか。

工業系分野への活用も考えていらっしゃるのですか?

もちろんです。たとえば、ロボットの台座にかかる圧力を計測したい時に、普通ならセンサーを搭載する分、台座に厚みが出てしまいますよね。その点、「ボルト軸力計」を使えば、そうした空間的な制約を取り払うことができる。それだけでも、ロボット設計においてはとても助かることなんです。スポーツ科学分野においても、ロボティクス分野においても、「ボルト軸力計」を用いた計測システムが、我々の研究の土台になっているのは間違いありません。

取材後記

印象的だったのは、河村先生の真っ直ぐな眼差しです。それは先生に師事する学生たちも同様で、ボルダリングウォールを見つめるその瞳は、キラキラと輝いていました。研究にひたむきに打ち込む河村先生と、学生たち。その舞台裏を支えているのが、「ボルト軸力計」を用いた計測システムであり、共和電業なのでしょう。 「ボルト軸力計」の活用によって、さまざまな障壁を乗り越え、日々研究を前進させられていること。それを端的に物語るのが、河村先生と学生たちに共通する、瞳の奥の輝きなのかもしれません。

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